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2010/03/03 久しぶりに珍しい手の外科症例に遭遇する [平日]

7:00 回診をはじめる。今日は手術日のため昨日新しい入院患者が入ってきている。しかし先週以前に入院していた患者は続々と退院しているので、患者数自体はそれ程変わっていない。今日は子供のcongenital hand症例が2例組まれているので楽しみである。小児科病棟にも訪れる。ここの小児科病棟も子供部屋らしく、色々な工夫がされている。たいがい看護師は可愛い感じのエプロンを付けている。小児科看護師の中でもこのようなエプロンの似合わない人もいるものだ。
7:50 今日は専科看護師のMrs.Chenさんが朝食にと台湾風パンケーキ(甘くなさそう)をくれた。それに加え手術日なので、Frolaがいつも通り教授の分とともに買ってきてくれていたので多くなってしまった。パンケーキは昼か夕方に回すことにしよう。
8:30 1例目は、短合指症の1歳過ぎの女の子だった。手は片側だけの先天奇形であるが、足をみると両側に絞扼輪や短合趾が見られる。この種の奇形は近年出生前エコー診断で解るようになってきていることもあり減少傾向にあるようだ。日本でも同様だろう。しかもこのような奇形は特別な施設でしか扱わなくなっていることもあり、あまりお目にかかることもない。この度は良い機会かも知れない。第Ⅲ・Ⅳ指は中節骨以遠が骨性にも癒合している。また、母指は分離されているが、その他には骨性の癒合はなく軟部組織のみだった。
9:00 zigzag切開でⅡ・Ⅲ、Ⅳ・Ⅴを分離していく。指長を保つためWebをしっかりつける。この際に指間のneurovascularに注意する。1歳程度なので組織はすべて細かいのである。簡単に見えるこのような作業も経験に基づいており、デザインに無駄がないものと思われた。
9:30 指間の分離は終わり、zigzagで切開した部で縫合可能な部分のみ無理せず縫合し、不足した部分には大腿外側部から分層植皮を行う。赤ちゃんの場合はおむつをするので、その部分にかからないように採皮することが重要であると言っていた。大人の女性の場合はスカートに隠れて目立たないようにするため、採皮は比較的近位にすることが多いのだが、やはり色々なコツというものがあるものだ。分層は0.10mm程度で小児は薄めを採取すると言っていた。薄いからそのままでも良いのかと思っていたがメッシュにしていた。血腫貯留を防ぐとともに皮膚に柔軟性を持たせることが理由だとのこと。採皮した皮膚を指間のそれぞれに植皮していく。サージロンというシリコンガーゼのようなものでカバーした上、tie overを行った。3・4指に関しては骨性の癒合でもあり、分離したとしても尖端が細くなってしまい美容的にも良くないし、実用的ではないと考えられたので処置は行わなかった。何だかマイクロを扱う教授の姿にはオーラがある感じがする。
IMG_2576.jpg
10:10 脊椎の後方固定よりも時間がかかったとか言いながら終了した。この類の手術は実際に助手として参加した方が勉強になる。特にデザインについてはしっかり頭に入れておく必要がある。
10:30 次の症例も手の先天奇形である。Radial club handという橈側列形成不全の4歳の女の子だ。両側性で右側は以前手術をされていた。両側とも母指欠損(Blauth type5)で内反手である。前回している右側は橈骨が完全に欠損したtypeであるが、左は低形成だが橈骨は残っている。この症例に対しては、内反手に対するcentralizationと尺骨遠位端の骨切り+遠位端安定化を行う予定だ。橈屈した内反手を正常位に戻すために、まずは軟部組織性(皮弁により軟部組織欠損部はカバーする)の再建:Wartenberg flapを行う。これはbilobular flapの1つであるが、橈側に生じた軟部組織欠損を尺側の余剰皮膚で2段階にカバーしていくものだ。このデザインにもコツがあり、図に書いて教えてくれた。また皮弁には皮膚に向かう穿通枝が入っていることを確認していた。しっかりと血流を確認しながら行うところがflap surgeonたる所以だろう。
11:00 皮膚性の拘縮を解離した後、尺骨遠位端の処置を行う、ECUのgliding floreを確認して尺骨遠位端に付着した軟部組織を骨膜下に剥離する。遠位・近位側をそれぞれstemとした長めのflapを作成する。尺骨遠位骨切り後にこれら同士で縫着するためである。TFCCは正常な解剖形態を示しておらず(もともと橈骨の低形成・尺骨遠位の突き上げにより、DRUJがない)、瘢痕様の軟部組織で充満している。骨端線の含まれた尺骨遠位端を切除してしまう(この成長線を残しておいたら再び尺骨が成長して内反手が進行してしまうことになるから)。最後に中手骨頭部分より、K-pin3本で手関節を正中位で固定する(橈骨へ1本、尺骨へ2本)。最後にfalpにしたTFCC周囲組織で尺骨遠位端を縫着しカバーする。ECUは若干elongationしていたが、特に処置は行わなかった。
11:45 外固定を行って終了とする。本来は母指がないため、示指の母指化か足趾移植により、再建することも検討されても良いのだが、教授曰く、足趾移植を勧めたが家族が同意してくれなかったのだそうである。正直、足趾移植も一度は見ておいておきたかった。
12:00 昼食にする。いつものように弁当を教授、Mr.シーたちと食べる。従って、朝食べきれなかったパンケーキは夜に回すことになった。教授達はこの後続けて脊椎の手術をするとのことだが、休憩していて良いと言われた。
13:00 医局に戻り、作業を行うことにする。早速、午前中の先天奇形の症例について、津下先生の教科書などで復習しておく。日本でもそれ程お目にかからない症例なのでしっかり覚えておかねば勿体ない。
14:00 再び手術に戻る。案の定、脊椎の手術は終了していた。1時間もかかっていないようだ。隣の部屋では、外反母趾の症例が準備されている。昨晩当直だったDr.許はぐったりしている。AM2時まで手術や救急対応があったそうなのだ。上腕骨のORIFと下腿の開放骨折の緊急手術をしたのだという。外傷に関してはやる気があれば症例豊富なようだが、使用できるインプラントやシステムの違いもあり、あまり興味がわかない。もっと若いうちに来ていたら手術を自らやらせてもらっていたかも知れない。
14:20 脊椎を終えて教授が執刀した。いわゆるMacbride法だが、今日の症例はそこまで手術が必要な症例のように思えない。変形が軽度なのだ。手術適応についてはいまだ不明な点が多い。母指MTP関節内側の関節包をY-Vに縫縮することと、母指内転筋腱を剥離(今日は切離まではしなかった)することがポイントだろう。母趾先端からのK-pin刺入は珍しく手間取っていた。
14:40 既にMr.シー達が準備して待っている大腿骨骨腫瘍(fibrous dysplasia疑い)の男子の症例に向かう。側臥位でTensor fascia lataをcutし、vastus lateralis muscleをsplitすると、皮質骨の膨隆した部分が見える。X線上、骨折線が見られたので病的骨折も伴っているようだ。同部を開窓し(骨質は固そう)、内部の腫瘍組織を鋭匙など用いて掻き出す。思っていたよりも内部の腫瘍は固そうだった。近位・遠位に向かってしっかりと切除していく。充分に取りきった(切除した内容物が海綿骨にほぼ変わっていることを確認)ところで洗浄した上、人工骨を充填(Genexというプリマフィックスのような材質・硬さのものと、アパセラムの顆粒のようなもの)していく。その後、7穴のコンベンショナルプレート(開窓部は凸状にややbendingし、近位2穴、遠位3穴スクリュー使用)を固定して終了となる。当然、タッピング・screw固定にも気動式ドリルを使用するのが早く終わらせるポイントだろう。
16:20 本日のもう一つの見どころのBPI術後(total arm typeの林口CG病院の失敗症例に対して、Dr.TuがneurotizationやFFMTをして機能改善した症例)のextensor tendonによるtenodesisの症例である。筋肉移植の回復が良く、屈筋腱のパワーが強いため指が屈曲位で使いにくくなってしまっているのだ。伸筋腱を用いて指を伸展位に固定することで更にgripをし易くするのが狙いである。今までBPIになったら機能回復など見込めないかと思っていたが、こういう症例を目の当たりにすると、現在はかなり進歩してきたんだなと思い知る。
17:00 PIP関節を屈曲40°・MP関節屈曲10°程度で遠位よりK-pinで固定する。この作業は全てブラインドでイメージは使わない。更に第4コンパートメントを展開し、Ⅱ・Ⅲ、Ⅳ・Ⅴの伸筋腱を同定しておく。橈骨遠位端と尺骨遠位端にそれぞれrevo screwを打ち込み、ここをアンカーとしてそれぞれの伸筋腱を近位にtractionをかけた位置(手指伸展位)で縫着し固定する。
17:20 外固定を行い終了となる。もう1つ外来手術の手根管+ばね指が残っていたが、Dr.許とDr.邸はここでお開きとなり帰って行った。自分は何となく帰る訳にも行かず残る。
17:40 いつもだいたい決まったおばちゃんが掃除しにやってくるのだが、仕事が早い。こういう人達にもしっかりとプロ意識を持たせて仕事をしてもらうことが重要なのだと思う。次は局所麻酔のため手早く始める。しかし、駆血が全く効いておらず出血してしまっている。特に見学する必要性もないのだが、部屋でPC画面や今日の手術記録を眺めながら過ごす。教授は患者と終始喋りながら手術している。20分以上かかっていたように思う。
18:20 今日はお開きとなった。他の部屋では形成外科が遊離血管柄付き骨移植の採取を行っていたようだが、もう採取し終わってしまった後のようだったので、中には入らなかった。ぷらぷらと手術室を散策していると、看護部の理念的な掲示がなされている。どこの病院でも同じような感じか?
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18:40 朝もらったパンケーキを持参して、地下で買った水餃子を一緒に食べて本日の夕食とする。
19:10 医局で今日のまとめなどを行う。手の先天奇形については、自分で扱うこともないだろうという理由で今まで殆ど勉強してこなかった分野なので、改めて教科書を開いてみると殆ど読んだ形跡がないのが解る。そういう意味でも新鮮だった。
20:00 教授が帰宅するようだ。まだ残っていたのか?という感じで驚いて帰って行った。
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